慶長度江戸城天守の考察(その5)…江戸城の3つの天守
さて、宮上案によると江戸城天守は破風や瓦の葺き方、壁面などに異なる点はあるものの基本構造は同じということになります。その辺を一覧にしてみます。
- 慶長度天守(1607〜1622)
- 規模…1階平面規模(18間×16間)、5階平面規模(7間5尺×5間5尺)、7尺間(5階入側縁のみ6尺)、棟高22間半
- 破風
- 妻側…1重目千鳥破風、2重目比翼千鳥破風、3重目千鳥破風、5重目入母屋破風
- 平側…1重目比翼千鳥破風、2重目千鳥破風、3重目向唐破風
- 屋根勾配…1重が5寸6分で上にいくに従い2分づつ急になり、最上部は6寸6分
- 作事大工…中井家(京大工)、中井正清の手による
- その他…鉛瓦葺、白漆喰壁、最上部の屋根のみ出桁造りではない、1階目のみ長押(壁面の横にある線)が無い
- 元和度天守(1623〜1637)
- 規模…1階平面規模(18間×16間)、5階平面規模(8間×6間)、7尺間、棟高23間
- 破風
- 妻側…1重目千鳥破風、2重目比翼千鳥破風、4重目軒唐破風、5重目入母屋破風
- 平側…2重目比翼切妻破風、3重目入母屋破風、4重目軒唐破風
- 5重目入母屋破風を除く全ての破風に石落風の出窓を設ける
- 屋根勾配…1重が5寸4分で上にいくに従い1分づつ急になり、最上部は6寸5分
- 作事大工…木原・鈴木家(徳川譜代大工)、中井家(京大工) 木原・鈴木家(特に鈴木長次)の主導であったと思われる
- その他…銅瓦葺、白漆喰壁、最上部に東照宮を祀る
- 寛永度天守(1638〜1657)
- 規模…1階平面規模(18間×16間)、5階平面規模(8間×6間)、7尺間、棟高23間
- 破風
- 妻側…1重目千鳥破風、2重目比翼千鳥破風、4重目軒唐破風、5重目入母屋破風
- 平側…1重目比翼千鳥破風、2重目千鳥破風、4重目軒唐破風
- 4重目軒唐破風に石落風の出窓を設ける
- 屋根勾配…1重が5寸4分で上にいくに従い1分づつ急になり、最上部は6寸5分
- 作事大工…木原・鈴木家(徳川譜代大工)、実際は配下の甲良宗広が執り行なう
- その他…銅瓦葺、銅板張り壁(黒色)
左より慶長度・元和度・寛永度江戸城天守の各破風配置(寸法や屋根勾配は反映していない)
こう見ると、慶長・元和・寛永の天守が基本構造は変わらないままでも、意匠はそれぞれ過去の影響を受けながら変化していったことが伺えます。