江戸城

江戸城天守台の石

流石にネタ切れなので、おそらくこれが江戸城天守についての最後の記事になると思います(寛永度については既に十分な資料があるので書きません)。江戸城天守は3度に渡り上げられましたが、天守台は4度築かれています。 慶長度天守 『当代記』の記述より、2…

江戸城天守の東照宮

東照宮といえば徳川家康を祀る御宮として各地に造営されましたが、江戸城内では紅葉山の東照宮*1が有名ですが、その他にも二ノ丸東照宮がありました。しかも2つもあり、1つは本丸と二ノ丸の間に、もう1つは二ノ丸御殿の一部としてあったようです。ここで注目…

三浦正幸の新たな慶長度天守復元案

数日前本屋に出かけた所、こんな本があるのが目に付きました。東京人 2010年 09月号 [雑誌]出版社/メーカー: 都市出版発売日: 2010/08/03メディア: 雑誌購入: 1人 クリック: 15回この商品を含むブログ (3件) を見るその中に三浦正幸氏の江戸城天守についての…

慶長度江戸城天守の考察(その10)…まとめ

確認すると慶長度については自分の考えをまとめていないので、簡単に書きます。 天守・天守台の構造は宮上茂隆氏の案が正しいと判断する。その理由は 『愚子見記』の記述より慶長度江戸城天守が逓減していることから層塔型と判断できる*1。 慶長度天守を中井…

元和度江戸城天守の考察(その3)…まとめ

資料を出尽くしましたので、まとめます。 慶長度本丸・天守の工事は京大工方の中井正清が主導していたが、元和度では京大工方の中井正侶と譜代の木原・鈴木方*1鈴木長次の二人が主導した。 中井正清と鈴木長次の関係は家康の頃には長次が建築した仙波本堂の…

元和度江戸城天守の史料(その7)…鈴木長次と中井正侶の関係

今日は鈴木長次と中井正侶の両者の関係を『大工頭 中井家文書』より読んでみます。大工頭中井家文書作者: 高橋正彦出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (1件) を見る徳川大坂城作事について [二三五]…

元和度江戸城天守の史料(その6)…中井家と木原・鈴木家の大工手間賃

以前、 http://d.hatena.ne.jp/tateita/20100607/1275875703 で『愚子見記』の記述より中井家の大工作料(手間賃)が元和度工事で引き下げられたと書きましたが、これを補強する文書が中井家文書にあります。中井家大工支配の研究作者: 谷直樹出版社/メーカ…

元和度江戸城天守の史料(その5)…材木調達の流れ

今日はこれまでの材木調達の流れを時系列順に説明します(石は割愛)。 元和4年 5月1日…毛利家に来年に江戸城天守工事が行われるとの評説が届く(以降、石の調達が行われる)。佐竹家家老、梅津政景が富士山中に天守用の材木を得ることを細井勝吉に求める。 …

元和度江戸城天守作事の史料(その4)…指図の提出

中井家は多くの指図を有しており、それらは現在『大工頭中井家建築指図集』で見ることができます。大工頭中井家建築指図集―中井家所蔵本作者: 谷直樹出版社/メーカー: 思文閣出版発売日: 2003/02メディア: 単行本 クリック: 43回この商品を含むブログ (2件) …

元和度江戸城天守作事の史料(その3)…その他、材木調達について

今日は前回に記した以外の元和度工事に関わる材木調達を俯瞰してみます。薩摩旧記増補 別帋之御状致拝見候、仍而御殿守あせり板三千枚進上之由、奉得其意候則御材木奉行衆ヘ具申渡候、當地参著次第、追々請取可申由、恐惶謹言、 青山伯耆守 元和五年(朱カキ…

元和度江戸城天守作事の史料(その2)…鈴木家の史料

http://d.hatena.ne.jp/tateita/20100716/1279249998 において『中井家支配棟梁由緒書』に「元和 5(1619) 江戸城天守用木伐出」という記述がありましたが、それを否定する可能性のある史料があります。 それは尾張藩附家老竹腰家に伝わる文書で、その内に…

元和度江戸城天守作事の史料(その1)…中井家の史料

続いて元和度江戸城天守作事(建築)の史料を解説します。先ず、中井家において天守作事を行ったとする史料をあげます。愚子見記(1682年) 一、御殿守当御代中井大和守指図覚 権現様御代 一、伏見御殿守 慶長六立、寛文十一迄七十一。 二、二条御殿守 同七…

元和度江戸城天守の考察(その2)…2人の大工

今日は元和度江戸城天守を手掛けたと思われる2人の大工棟梁、中井大和守正侶と鈴木近江守長次について説明をします。中井正侶(1600〜1631) 京大工中井正清(1565〜1619)の子で中井家2代目、長吉郎。正清の死後に家督を継ぐが、若年のために家老的立場であ…

元和度江戸城天守の考察(その1)…元和度の江戸城工事について

さて前回にお話した通り、元和度の江戸城天守について考察を始めます。 もっともあらかじめ結論を言うと「よく解らない」となりますので、その時点で嫌だと思う方はご覧にならないほうが良いかと思います。さて、元和度の工事は神田川の開削工事*1、内郭の城…

今後の方針

さて、これまでから慶長度江戸城天守は層塔型であると私は考えています。かといって即、「『中井家指図』は慶長度江戸城天守のもの」と断言は出来かねる点があります。宮上茂隆氏が元和度とする津軽家の『江戸御殿守絵図』はその来歴が不明なので、即座に断…

3天下人にとっての天守

天守は戦術的な意義も多く有していますが、その本質は相手を心理的に圧倒するという戦略・政略的な意図を主眼としています。その対象は様々ですが、特に私的には天守に登らせるなど個人間の優位に立つものとして、そして公的には不特定多数に外からその威容…

慶長度江戸城天守の考察(その9)…層塔式のハードル

内藤昌氏案の慶長度江戸城天守が高欄付きの望楼式であるという論拠は 高欄については二条城・伏見城は意識的に高欄のある絵図を選択した。駿府城は物見の段という名称のみで、2階の様に高欄があるとは資料には記述されていない。 形式については二条城(1602…

慶長度江戸城天守の考察(その8)…あまりアテにはできない絵図(江戸城編)

最後に本題の江戸城となります。もっとも江戸城天守は慶長・元和・寛永の3度にわたり上げられていますが、残念ながら慶長度とされている絵はないのが現状です。その為、ここに挙げれるのは元和度か寛永度と評価されているものです。 どの時代の天守か確定し…

慶長度江戸城天守の考察(その7)…あまりアテにはできない絵図(二条・伏見城編)

次は最も多く残っている二条城・伏見城天守についてです。この時代の京は『洛中洛外図屏風』として多くの作品が残されており右隻に方広寺、左隻に二条城という豊臣と徳川の権力の象徴を並べることが特徴でした。また右隻の端には強引に伏見城(ただしこれは…

慶長度江戸城天守の考察(その6)…あまりアテにはできない絵図(大坂城編)

『中井家指図』を元和度とし、慶長度天守を望楼式とした内藤昌氏ですが、彼がその根拠としたのは『洛中洛外図』に描かれた伏見城や二条城、『江戸名所図屏風』や『武州豊島郡江戸庄図』といった絵画資料を主としています。 しかし良く『決定的』とも言われる…

慶長度江戸城天守の考察(その5)…江戸城の3つの天守

さて、宮上案によると江戸城天守は破風や瓦の葺き方、壁面などに異なる点はあるものの基本構造は同じということになります。その辺を一覧にしてみます。 慶長度天守(1607〜1622) 規模…1階平面規模(18間×16間)、5階平面規模(7間5尺×5間5尺)、7尺間(5階…

慶長度江戸城天守の考察(その4)…『中井家指図』の位置付け(元和度天守)

さて、慶長度江戸城天守が5重5階の層塔式とすると浮上するのが『中井家指図』を用いた宮上茂隆氏の復元案です。 中井家指図、宮上茂隆案 しかし『中井家指図』は内藤・三浦氏は元和度天守としています*1。 これに対して宮上氏は津軽家に伝わる『江戸御殿守絵…

慶長度江戸城天守の考察(その3)…いわゆる前期層塔式というものについて

天守・櫓の形式を説明する本では前期望楼式(例:犬山城)、後期望楼式(例:姫路城)、層塔式(例:宇和島城)で分類されています。しかし最近は用いられなくなりましたが、以前は層塔式も前期と後期に分けて論じられていた時代がありました。 内藤昌氏がよ…

慶長度江戸城天守の考察(その2)…天守の形式について

城郭の櫓は天守も含めて2重以上のものは望楼式と層塔式の2種に分類されます。 望楼式は入母屋造の上部に望楼を載せた形、層塔式は各階を規則正しく逓減させた点に特徴があります。 櫓(5重)の内部概要図 左が望楼式、右が層塔式。望楼式は3つの建築物が積み…

慶長度江戸城天守の考察(その1)…天守の重・階数について

先ず天守の外見は何重で、内部は何階であるかを考察します。これまでの史料・復元案で出されたのは史料 『慶長見聞集』 然レバ家康公興サセラルゝ江城ノ殿守ハ五重、鉛瓦ニテ葺キ給ウ。富士山ニ並ビ、雪ノ嶺ニ聳エ、夏モ雪カト見エテ面白シ。 『毛利三代実録…

慶長度江戸城天守の復元(追記)

今日は最初に復元案を出した後、各人がどの様な修正を行ったかをそれを記した本と共に書きます。内藤昌 慶長度天守の作事大工を中井正清のみとする(ただし、『中井家指図』を元和度天守とする方針は変わらず)。城の日本史 (NHKブックス カラー版 7)作者: …

慶長度江戸城天守の復元(三浦正幸版)

徹底図解徳川三代―覇業をなし遂げた三人の将軍 (Seibido mook)出版社/メーカー: 成美堂出版発売日: 1999/12/01メディア: ムック クリック: 21回この商品を含むブログ (2件) を見る『徹底図解 徳川三代 覇業をなし遂げた三人の将軍』より(金澤雄記作成) 史…

慶長度江戸城天守の復元(大竹正芳版)

築城―覇者と天下普請作者: 松本諒士出版社/メーカー: 理工学社発売日: 1996/01メディア: 単行本 クリック: 30回この商品を含むブログ (2件) を見る『築城―覇者と天下普請』より 『中井家文書』『愚子見記』などを引用したとする(天守台や天守自体の規模は『…

慶長度江戸城天守の復元(宮上茂隆版)

次に宮上茂隆氏の復元概要を『徳川家康創建江戸城天守の復元』 建築学会大会講演梗概集 1990年(国立情報学研究所より)と、『歴史群像 名城シリーズ7 江戸城』を用いて説明します。江戸城―四海をしろしめす天下の府城 (歴史群像 名城シリーズ 7)出版社/メー…

慶長度江戸城天守の復元(内藤昌版)

先ず最初に復元案を発表した内藤昌氏の復元案概要を『江戸図屏風 別冊 江戸の都市と建築』より記述します。江戸図屏風 (1972年)作者: 諏訪春雄,内藤昌出版社/メーカー: 毎日新聞社発売日: 1972メディア: ? クリック: 49回この商品を含むブログ (2件) を見る …